川崎の『相続』はお任せください

相続トータルサポート@川崎 <span>by 心グループ</span>

相続預金の仮払い制度について

  • 文責:所長 弁護士 秋葉俊孝
  • 最終更新日:2025年11月11日

1 遺産分割前の被相続人の預貯金の払戻しについて

基本的に、被相続人の預貯金口座は相続が発生すると、凍結されてしまいます。

これは、被相続人の預貯金が不正に流出することを防ぎ、遺産分割におけるトラブルの発生等を予防する役割を持つ措置です。

従前、遺産分割協議をして銀行で相続手続きをするまで、被相続人の預貯金の引き出しはできませんでした。

一方で、相続人としては、当面の生活費や葬儀費用、相続税の納付など、遺産分割協議が成立する前に被相続人の預貯金を使用したい場面もあります。

このような背景から、現在では遺産分割前であっても一定の条件のもとで、被相続人の預貯金を引き出すことができる制度が設けられています。

遺産分割前に払い戻しを受けられる制度は2つあります。

ひとつは、家庭裁判所を介さずに金融機関で一定金額の払戻しができる制度、もうひとつは家庭裁判所での手続きを経て払戻しを受ける制度です。

以下、それぞれについて詳しく説明します。

2 家庭裁判所を介さずに金融機関で一定金額の払戻しができる制度

民法909条の2により、1つの金融機関あたり、相続開始時の預貯金額の3分の1に法定相続分を掛けた金額、または150万円のうちいずれか低い方までを引き出すことが可能です。

一般的に、金融機関における被相続人の預貯金を払い戻す手続きをする際には、相続開始(被相続人死亡)の事実と法定相続割合を証明するため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本なども必要になることに注意が必要です。

【参考条文】(民法)

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)

第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

参考リンク:e-Gov法令検索(民法)

3 家庭裁判所での手続きを経て払戻しを受ける制度

2とは別に、相続人から家庭裁判所に対して相続財産である預貯金の払戻しの申立てをし、家庭裁判所による審判を経て、相続預金の全部または一部の払い戻しができる制度もあります。

この制度は、家庭裁判所に遺産分割調停や審判を申立てている場合に、家事事件手続法第200条第3項に基づいて利用することが可能です。

実際に払戻しを受けることができる金額は、家庭裁判所が、相続人が生活費として必要とする金額、相続財産に属する債務の弁済、その他の事情を考慮して個別に判断するとされています。

【参考条文】(家事事件手続法)

(遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)

第二百条

(第1~第2項略)

3 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

(第4項略)

参考リンク:e-Gov法令検索(家事事件手続法)

  • 電話相談へ
  • 選ばれる理由へ
  • 業務内容へ

スタッフ紹介へ